父はよく胡蝶蘭をもらう人で、ここ最近は昇進や退職やお誕生日などで、我が家には胡蝶蘭の鉢がたくさんありました。いろんな種類の胡蝶蘭があり、父は花が枯れた後も一生懸命お世話をして、元気がない時は肥料やら薬やらを色々あげて、それはそれは大切に育てていました。中には10年以上毎年少ないながら花をつけているものもありました。
さてそんなある日、そろそろ暖かくなったから、玄関横にある温室にでも胡蝶蘭を出そうかな、と父が胡蝶蘭を育てている棚の上に目をやった瞬間、全てないことに気づきました。最近のこのパターンだと、犯人は絞られます。
「おばあちゃん、胡蝶蘭しらない?」と核心に迫った父。案の定おばあちゃんは「捨てた」とだけ言い、父はヘナヘナとなってしまいました。

我々の両親はそれほどというか、全く共感力が高くないので、ドラミちゃんのものを捨てられてもどこか他人事だった父ですが、遂に自分のものを捨てられたことで、この問題の大きさに気づいたそうです。
しかし精神科のお医者さんにも「大丈夫」と言われてしまい、ただのモラルのない老人をこれからどうしよう…と頭を抱えてしまいました。そんなある日、母が単身赴任先から帰ってくるとのことで、急いでテーブルの上を整頓していた時に、ドラミちゃんが封筒を見つけました。
何と封筒の中には、昨年病院でお医者さんから渡された診断書が入っており、そこには「MCI(軽度認知障害(認知症の一歩手前)の状態と認められる」との記載があったのです。
実はおばあちゃんの手前、患者の面子を守るために「大丈夫ですよ」とお医者さんは言っていただけで、診断は別にあったのでした。
それをあろうことか父は封筒を見ず、封筒の存在まで忘れてしまっていたのです。母が家に帰ってこなかったら、おばあちゃんがMCIだったことにも気づかないままひどく認知症が進んでいたかもしれません。
母は必要以上に人の尊厳を踏み躙るので、おばあちゃんのこの話は知りませんし誰も教えません。
でもとにかく、母の帰省のおかげで、何とかおばあちゃんの行動の説明にも納得が行ったドラミちゃんと父。
しかし、こんな大事なことを忘れて放置していた父も、実はかなりイってるのではないかと心配になる出来事だったのでした。







