すみれの部屋

おら海外さ来ただ!

何でも好きなものを買ってあげるよの罠

 

私が大学に入ってびっくりしたこと、それは親元を離れて暮らし始めてから、大学のある地元の友達のお家に招かれて目の当たりにした「普通」の家族関係です。お母さんの言った言葉を素直に受け取り、ふざけたやりとりをしている親子の姿をみて、「お母さんに気を遣わないの…?」と思わず聞いてしまいました。それほど、無意識のうちに母親の言葉の裏を汲んで暮らしていたのでしょう。

母の「プレゼントなんて送らなくて良いから!」は「プレゼントを送れ」というフリです。私たち姉妹は常にフリの中で生きてきたので、今更フリのない人生に戻れなくなってしまいました。それには幾重積み重ねられた経験とPTSDが深く関係しているような気がしてならないのです。

では、今回はドラミちゃんの体験をご紹介しましょう。

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ドラミちゃんが大学に入ってすぐでしょうか。相変わらずバブルを身に纏った母が私たちの暮らす地域にやってきました。すごい気合です。そして開口一番、ドラミちゃんの好きなお洋服買ってあげると言うではないですか。

私はドラミちゃんに好きなものは何でも買ってあげたい質なのですが、ドラミちゃんが好きであろうブランドを買ってあげられる財力がなかったので、「あそこのお店にしなよ」とドラミちゃんを促し、両親をドラミちゃんの好きなお店に連れて行きました。

父親はエレベーターの横の無料のベンチに腰掛け、母とドラミちゃんと私の3人で服選びをしていました。そこのお店は、平均予算が2〜3万円と、庶民にとってはお高めのお店なのですが、誕生日だし、もう大学生なんだし、良いだろうと考え、プレゼントを選んでいました。しかし母はデブが着たらサイズがなかったのかな…と察せられるデザインの洋服など、明らかに個性的の延長から随分と外れた安い洋服をドラミちゃんに勧めてくるのです。しかし、ドラミちゃんはすでに心が決まっていたようで、その中では少しお安めの可愛いTシャツを選んでいました。途端に機嫌が悪くなる母。人前でお金のことで揉めたくない母は、爬虫類フェイスの目で口角だけ上げて支払いを済ませるとそそくさと父のいる無料のベンチへ直行しました。

そして始まった母の自分語り。やれ「私は安い服しか着ないであなたたちの学費を稼いでいる奴隷だ」だの、やれ「私は親に高い服をねだったことがないし、買い与えられていたものを文句も言わずに着ていた」だの言い始めました。

それを聞いて

いやあのね、おばあちゃんはママに振袖3着買ってたし、服だってブティックの超高いやつ買ってたじゃない。そんなねだらなくても素敵なの買ってもらってたじゃない。あなたは安い服しか着てない訳じゃなくて、私たちに買った安い服のお下がりを勝手に着てるだけじゃない。自分で高い服買ってるじゃない!

という私の心の声が溢れてしまいました。そして一言「おばあちゃんから高い服買ってもらってたじゃんママだって。」と一言申してしまったのでした。それから母の発作が少し収まり、そのあと父の奢りでみんなでフルーツパフェを食べに行ったのですが、ドラミちゃんはその服を見るたびにあの日のお買い物のことを思い出すようで、まだ数えるほどしか袖を通していません。

それ以来、母が「何でも好きなもの買ってあげるよ」と言った時の予算は大体千円以内に収めるようにしていますが、妹のTシャツの一悶着以降は母の方で既にハニーズ(のワゴン)から私たちの身体に合わないサイズの服を買って、プレゼントを準備してくれているので、最近ではプレゼントの一悶着はなくなりました。

欲しいものをリクエストをして、それが高かった場合、母は永遠に値段に言及してくるので、欲しいものは伝えずにひっそりと生きていく事が吉だということを学んだドラミちゃん10代後半でした。